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朝鮮音楽の研究

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の音楽・軍歌・歌謡を翻訳。現在100曲収録を目指しています。開設:チュチェ104(2015)年4月23日 ※2016/8/22 コメント欄開放 姉妹サイト:http://www.geocities.jp/totalwar1939/

女性の歌(녀성의 노래)

リ・ウォンウ作詞、キム・オクソン作曲の『女性の歌』(1947年創作)。

 

 

人民主権を仰ぎ 歩み出る女性たちよ
我らの力によって 祖国の基盤は日々建設されるのだ
工場の女性も 農村の女性も
胸ごとに燃えたつ愛国心を抱き
さっそうと団結しよう 将軍様の周りに
絢爛たる祖国 完全独立のために

 

工場ごとに 農村ごとに団結した女性たちよ
我らは 祖国を建設する力なのだ
働こう 我らの幸福のために
棟ごとに燃えたつ愛国心を抱き
さっそうと団結しよう 将軍様の周りに
絢爛たる祖国 完全独立のために

 

인민주권 받들고 나가는 녀성들아
우리 힘에 조국터전 날마다 건설된다
공장의 녀성도 농촌의 녀성도
가슴마다 불타는 애국심 품고
씩씩하게 뭉치자 장군님 두리에
찬란한 우리 조국 완전독립 위하여

 

공장마다 농촌마다 뭉쳐진 녀성들아
우리들은 조국을 건설하는 힘이다
일하자 다같이 우리 행복 위하여
가슴마다 불타는 애국심 품고
씩씩하게 뭉치자 장군님 두리에
찬란한 우리 조국 완전독립 위하여

 

 

解説。

ソ連軍政下で行われた社会主義改革の一環として女性解放が行われた時期に創作された歌。その後、解放以前の歌や解放直後の歌、それに戦時歌謡など古い歌を多数カバーしていた普天堡電子楽団によってふたたび世に送り出された。なお1947年の歌なので、歌詞中の「将軍様」は当然ながら金日成主席のことである。また、未だ朝鮮民主主義人民共和国の成立には至っておらず、歌詞中の「完全独立のために」という部分はそうした時勢を反映している。

普天堡電子楽団が再形象しレパートリーに加えた古い時期の歌は、以下の通りである。なお私が確認していない音源が存在する可能性があることをお断りしておく。

 

・解放前の歌

 思郷歌(不朽の古典的労作) 

  反日戦歌(不朽の古典的労作)

  人民主権歌 

  総動員歌

 不平等歌

  花を売る乙女 

    朝鮮の歌(不朽の古典的労作)

 赤旗の歌

 

・解放直後の歌

 女性の歌 

 女性解放歌 

 産業建国の歌

 口笛(もとはチョ・ギチョンの詩)

 少年団行進曲

 

戦時歌謡

 国保衛の歌 

    決戦の途へ 

    進軍また進軍 

    海岸砲兵の歌 

    自動車運転士の歌 

    塹壕のなかの我が歌 

    狙撃手の歌 

    戦士と娘 

    誰も知らない 

   泉のほとりで 

    母の歌 

   旦那が英雄になったの 

   祝福の歌(不朽の古典的労作) 

 

 

こうしてみると朝鮮戦争期の戦時歌謡が多いが、一方で抗日革命音楽も相当数カバーしていたことがわかる。それに比べると解放期の歌謡は少ないが、この時期の歌謡は歌詞の内容が古いため現代の政治的風潮や時代の雰囲気にそぐわないことが多く(抗日革命音楽も同様ではあるが)、数々の歌謡をアレンジしてきた普天堡もいささか調理に困ったという事情があったのではないかと推察している。

たとえば、現在では「将軍様」といえば金正日総書記のことであるが、前述のとおり解放後初期の歌では金日成主席を指す。また『金日成将軍の歌』や『人民共和国宣布の歌』のように、現在では絶対に使われることのない「北朝鮮」という語が歌詞中に登場することもある。さらに『勝利の五月』のように「勤労者」「計画経済」などの熟語が登場する歌もある。これらの言葉はチュチェ思想が確立される過程で、新たに創作される歌からは次第に消えていった。

そして、そのチュチェ思想が徐々に形骸化し、社会主義イデオロギーが退潮しつつある現在の先軍政治全盛時代においては、このような語が登場する歌はなおのこと時勢に即さないといわざるをえない。(そうは言っても、これらの曲は現在でも朝鮮音楽界において重要な地位を占めているというのが、また難しいところだ。)

だが『口笛』を再形象した際のいきさつ(http://song-of-dprk.hatenablog.jp/entry/2015/05/06/234131 を参照されたい)を見てもあきらかなように、古い題材であってもそれを埋もれさせることなく果敢に取り組み、電子音楽というモダンな息吹を吹き込んで現代に送り出してきた普天堡のクリエイティビティは今後も評価されていくであろう。

思えば朝鮮の音楽界は常に、電子工学の発展に象徴される技術刷新に伴う現代化を強力に推し進めてきたといえる。そのような意味で普天堡電子楽団はまさに最新技術の申し子であった。普天堡の設立を金正日総書記の「物好き」の一言で片づけてしまうのは簡単だが、最新テクノロジーに対する多大な理解を示した金正日の深い愛のふところのなかで育まれたからこそ、普天堡電子楽団は朝鮮で最も優れた楽団のひとつになれたのである。

そして金正恩第一書記がチュチェ音楽の「現代化」路線を継承した現在、牡丹峰楽団がその後継者として、普天堡ですら成し得なかった国歌『愛国歌』の再形象をはじめとして、音楽の現代化を試み続けている。