読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

朝鮮音楽の研究

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の音楽・軍歌・歌謡を翻訳。現在100曲収録を目指しています。開設:チュチェ104(2015)年4月23日 ※2016/8/22 コメント欄開放 姉妹サイト:http://www.geocities.jp/totalwar1939/

生とは何か(생이란 무엇인가)

普天堡電子楽団 解説付き

リ・チヌ作詞、ファン・ジニョン作曲。

 

生とは何か 誰かが問うならば
我らは答えるだろう
最後の瞬間に振り返るとき
笑って追憶する日々だと

 

小川の水が集まって 大きな川となるように
日々が集まって 生を成すだろう
その生が短くとも 誰を咎めようか
永生する命は 時間とは無縁なのだから

 

生とは何か 誰かが問うならば
我らは答えるだろう
歳月が過ぎても忘れられない
祖国に捧げたあの時だと

 

静かな朝に霧が消えるように
一生を終えたとしても
母なる祖国は忘れない
あなたの名前とともに歩んだ道を

 


생이란 무엇인가 누가 물으면
우리는 대답하리라
마지막 순간에 뒤돌아볼 때
웃으며 추억할 지난 날이라고

 

시냇물 모여서 강을 이루듯
날들이 모여 생을 이루리
그 생이 짧은들 누가 탓하랴
영생은 시간과 인연 없어라

 

생이란 무엇인가 누가 물으면
우리는 대답하리라
세월이 간대도 잊을 수 없는
조국에 바쳐진 순간이라고

 

고요한 아침에 이슬이 지듯
한생이 사라진대도
어머니조국은 기억하리라
그대의 이름과 걸어온 길을

 

 

解説。

キム・グァンスクの透き通るような歌声と相まって、聞けば聞くほど味わい深い歌だ。というのも、歌詞中にはチュチェ思想の世界観、人生観、死生観がすべて盛り込まれているからだ。

ここでチュチェ思想について簡単に述べておく必要があるだろう。

朝鮮民主主義人民共和国は1967年に「唯一思想体系」を採択した。これは金日成の権威の絶対化と並行して、単一のイデオロギーで社会を教化することを眼目としていた。この「単一のイデオロギー」はすぐにチュチェ思想として具体化される。1972年憲法において金日成国家主席に推戴されるとともに、国家の指導理念としてチュチェ思想を導入することが明記された。

チュチェ思想は時代とともにその内容と解釈とを大きく変容させてきた。当初は「マルクス・レーニン主義を朝鮮の実情に即した形で適用」したものとされていたが、後には「金日成主席が創始し、金正日総書記が継承・発展」させたとして、マルクス・レーニン主義を超越するとされた。

絶えず変遷を繰り返すチュチェ思想だが、その根幹をなす「事大主義の否定」という理念は決して変わらない。古くから中国や日本をはじめとした外国勢力の干渉に晒された朝鮮史を踏まえれば、朝鮮人民が多くの困難がありながらも「自主」路線を強硬に堅持する理由がわかるというもの。そして中ソ論争時にソ連と中国のはざまで苦しめられた記憶も新しい1960年代後半~1970年代初頭の時期にチュチェ思想が産み落とされたのは歴史の必然とさえいえるだろう。

 

さてチュチェ思想においては、人間の持つ生命には二つの側面、すなわち「肉体的生命」と「社会政治的生命」があると考える。

肉体的生命は実のふたおやから与えられるものであり有限のものであるが、歌詞2番にある通り、党と首領によって与えられる社会政治的生命は時間とは無縁であり、社会政治的生命のもとで人間は永生するとされている。

また金正日総書記は著作において、日帝の強圧下にあっても決して希望を失わなかった抗日パルチザンに倣い、革命家は「革命的楽観主義」で武装しなければならないと指摘した。「最後の瞬間に振り返るとき 笑って追憶する日々」を生き抜いた人は、まさに革命的楽観主義を信念として一生を過ごした人だといえる。そうした人の足跡を「母なる祖国は忘れはしない」のである。

 

 参考:朝鮮民主主義人民共和国の神話と現実(コリア評論社) 

    北朝鮮 遊撃隊国家の現在(和田春樹、岩波書店